この記事でわかること
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「WhatsAppマーケティングにShopifyがネイティブ対応した」というニュースを見て、米国向けストアがそのまま導入を検討すると、途中で壁にぶつかります。Shopifyヘルプセンターの該当ページに、こう明記されているからです。
You can't send WhatsApp marketing messages to customers in China, Crimea, Cuba, Donetsk, Iran, Luhansk, North Korea, Syria, or the United States.
(中国、クリミア、キューバ、ドネツク、イラン、ルハンシク、北朝鮮、シリア、またはアメリカ合衆国の顧客にWhatsAppマーケティングメッセージを送ることはできません。)
米国のリストと並んでいるのは、いずれも制裁対象地域か通信規制の強い国です。その中に、Shopifyの主要市場である米国がそのまま含まれています。米国拠点のストアが使えないわけではなく、他の対象国にいる購読者には送信できます。しかし自社の顧客の大半が米国内にいるストアにとっては、実質的に「使えない」に近い制約です。
この記事では、Shopify Messaging(旧Shopify Email)のWhatsApp機能を公式情報で確定させ、対象国だけでなく料金体系・利用条件も整理します。そのうえで、米国向けにWhatsAppマーケティングを実現したい、あるいはより高度な自動化が必要なストア向けに、実在する連携アプリ5本を比較します。調査日は2026年9月4日です。
先に結論
Shopify Messagingは2026年7月29日、WhatsAppマーケティング配信に対応しました。 Shopify Changelogで告知されています。Basic・Grow・Advanced・Shopify Plusの全プランで、追加アプリなしに使えます。
しかし送信対象からアメリカ合衆国が除外されています。 中国、キューバ、イラン、北朝鮮、シリア、クリミア、ドネツク、ルハンシクも同様です。米国拠点のストアは、他の対象国の購読者には送信できます。
中国はさらに厳しい扱いです。 消費者側のWhatsApp利用自体が禁止されており、中国に登録された事業体はこの機能を一切使えません。
ブラジル・インドネシアのストアには追加条件があります。 自国宛の送信はできますが、他国宛に送るにはMetaでのビジネス認証か、1日1,000件以上の会話を電話番号ごとに30日連続で達成する実績のどちらかが必要です。
日本は対象国です。 除外リストに入っていないため、日本のストアが日本国内の購読者へWhatsAppマーケティングを送ることは可能と読めます。ただし、日本単独の単価はShopify公式ページに掲載がなく、「その他地域」区分に含まれるかどうかは断定できません。
条件別の見立ては次のとおりです。
- 米国の顧客が中心のストア:Shopify Messagingのネイティブ機能では届きません。実現するには、独自のWhatsApp Business Account(WABA)を持つサードパーティアプリが必要です。
- 除外国以外の顧客が中心のストア:追加アプリなしでも配信自体は可能です。ただしカート復旧の自動化やAIチャットボットなど高度な機能はアプリの領域です。
- 費用を抑えて試したい:Dondyの無料プランかChatyの無料プランで、WhatsAppボタンの設置から始められます。ただしどちらもマーケティング配信そのものではありません。
Shopify標準でどこまでできるか
何が無料で、何が課金対象か
Shopify MessagingはApp Storeのリスティング上、無料でインストールでき、送信したメッセージ数に応じて課金される仕組みです。プラットフォーム利用料や連絡先数による段階課金はありません。
料金ページによると、テスト送信は週25通まで無料です。1メッセージの文字数上限は1,024文字。この上限を超えても、SMSのように分割課金される旨の記載はありませんが、超過分の扱いは公式ページに明記がなく確認できていません。
見落とされがちな課金対象が2つあります。新規購読者への確認メッセージと、「INFO」や「HELP」といったキーワードへの自動返信も、それぞれ1通として課金されます。これはコンプライアンス上省けない送信なので、キャンペーン通数に対する固定の上乗せとして見積もる必要があります。
顧客がメッセージに返信すると24時間の「カスタマーサービスウィンドウ」が開きます。この間、注文確認や問い合わせ対応などのutilityメッセージは無料です。ただし、マーケティングメッセージと認証メッセージはこのウィンドウ内でも通常料金のまま課金されます。返信のたびにタイマーはリセットされます。
料金は国・地域別のUSD単価
料金ページは対象国・地域ごとの単価表を公開しています。抜粋すると次のとおりです。
| 国・地域 | 1通あたりの価格 |
|---|---|
| インド | 0.024ドル |
| カナダ | 0.050ドル |
| メキシコ | 0.076ドル |
| イギリス | 0.106ドル |
| フランス | 0.172ドル |
| ドイツ | 0.248ドル |
| その他アジア太平洋 | 0.146ドル |
| その他 | 0.121ドル |
日本の単価は表に個別記載がありません。地理的には「その他アジア太平洋」区分に含まれると推測されますが、Shopify公式ページが日本を名指ししていない以上、断定はできません。導入前に管理画面上の実際の表示単価を確認することを勧めます。
対象国から外れているのは9か国・地域
利用条件のページには、対象国の例外がこう整理されています。
- アメリカ合衆国:WhatsAppマーケティングメッセージを送れません。ただし米国拠点のストアは、他の対象国にいる購読者には送信できます。
- 中国:消費者向けのWhatsApp利用自体が禁止されており、中国拠点のShopifyストアではWhatsApp機能そのものがサポートされません。
- 制裁対象地域:キューバ、イラン、北朝鮮、シリア、クリミア、ドネツク、ルハンシクでは、WhatsAppマーケティングの利用も、これらの地域の顧客への送信もできません。
さらにブラジル・インドネシアのストアには固有の条件があります。自国内の顧客への送信はできますが、他国の顧客に送るには、Metaでのビジネス認証を完了するか、電話番号ごとに1日1,000件以上のビジネス起点の会話を30日連続で達成してアカウントをスケールさせる必要があります。
利用条件とコンテンツガイドライン
WhatsAppマーケティングを使うには、Shopify Messagingアプリのインストールに加え、Meta Embedded Signup経由でWhatsApp Business Account(WABA)を接続する必要があります。事業者はWhatsApp Business Solution TermsとBusiness Messaging Policyの遵守が求められ、事業体が中国に登録されていないことも条件です。
新規のWABAは1日2,000通という送信上限があり、Metaの信頼済みアカウント階層を通過するまでこの上限が続きます。
コンテンツ面では、メッセージテンプレートは配信前にMetaの審査を通す必要があります。すべてのメッセージ本文には「STOPで配信停止」という表記が既定で入り、これは削除も編集もできません。画像ヘッダー・テキスト・商品は使えますが、動画ヘッダーとカルーセルカードは非対応です。顧客の明示的なオプトインも必須です。
判定
除外国以外の顧客が中心で、シンプルなブロードキャスト配信だけを想定しているなら、標準機能で完結します。しかし米国の顧客に届けたい場合、カート復旧の自動化・AIチャットボット・WhatsApp内でのカタログ購入・複数エージェントでの共有受信箱といった機能が必要な場合は、標準機能の範囲外です。
WhatsApp連携アプリ5本の比較
2026年9月4日時点で、各アプリのShopify App Storeページから取得した値です。
| アプリ名 | 開発元 | 評価(件数) | 開始価格 | 公式WhatsApp Business API |
|---|---|---|---|---|
| Zoko: WhatsApp for D2C Brands | Bourbon Science Inc. | 4.9(404件) | 49.99ドル/月 | 対応 |
| Interakt ‑ WhatsApp Marketing | interakt.shop | 4.1(219件) | 21ドル/月 | 対応 |
| Dondy: WhatsApp Marketing+Chat | Dondy | 4.8(784件) | 無料〜 | 上位プランのみ対応 |
| WhatFlow: Whatsapp Automation | Scrptble | 3.9(330件) | 無料(従量課金)〜 | 既定は非公式接続 |
| Chaty Chat Buttons & WhatsApp | Premio | 4.9(292件) | 無料〜 | 非対応 |
Zoko: WhatsApp for D2C Brands

出典: Shopify App Store(Zoko: WhatsApp for D2C Brands)、2026年9月4日時点
公式WhatsApp Business APIを使い、ブロードキャストキャンペーン、Shopifyのセグメントを使った配信、カート復旧の自動フロー、複数エージェントでの共有受信箱を備えます。特徴は、顧客がWhatsApp内でShopifyのカタログを閲覧し、離脱せずに購入まで完了できる点です。
プランはStarter 49.99ドル/月(会話ごとに0.015ドル、上限なし)から、Plus 79.99ドル/月(月5,000会話込み)、Elite 139.99ドル/月(同10万会話込み)、Max 499.99ドル/月(同500万会話込み)まで4段階です。AIボットは各プランの追加アドオン(24.99ドル/月〜)です。7日間の無料トライアルがあります。
Interakt ‑ WhatsApp Marketing

出典: Shopify App Store(Interakt ‑ WhatsApp Marketing)、2026年9月4日時点
カート復旧リマインド、代引き(COD)注文の二重確認、WhatsApp Blue Tick(認証バッジ)申請、自動応答FAQなどを備えます。プランはStarter 21ドル/月からPremier 99ドル/月まで4段階で、いずれもプラン料金とは別にWhatsApp会話単位の従量課金が加算されます。14日間の無料トライアルがあります。
評価は4.1(219件)で、5本の中では相対的に低めです。低評価レビューの1件では「カート復旧メッセージが機能しない」「注文確認が3割程度失敗する」という具体的な不具合が報告されています。単一のレビューであり一般化はできませんが、導入前に自店での動作確認を推奨します。
Dondy: WhatsApp Marketing+Chat

出典: Shopify App Store(Dondy: WhatsApp Marketing+Chat)、2026年9月4日時点
5本の中でレビュー件数が最も多く、4.8(784件)です。無料プランはWhatsAppボタンの設置のみで、マーケティング配信は含まれません。Pro(6.99ドル/月)で手動のカート復旧・注文確認メッセージが使えるようになり、公式WhatsApp APIによる自動配信とマーケティングキャンペーンが解放されるのはPower Automation(79.99ドル/月、米国向け会話単価0.0158ドル〜)以上です。Elite(159.99ドル/月)ではAIチャットボットや5エージェント対応の受信箱が加わります。Judge.me、Loox、Klaviyo、Shopify Flowとの連携が明記されています。
WhatFlow: Whatsapp Automation

出典: Shopify App Store(WhatFlow: Whatsapp Automation)、2026年9月4日時点
注文確認、配送ステータス更新、カート復旧、再入荷通知を自動化します。料金はFree(0ドル、月51通目から1通0.01ドル)からUltimate(49.99ドル/月)まで6段階で、いずれも送信数に応じた従量課金が別枠であります。
もっとも注意すべき点は接続方式です。リスティングの説明は「WhatsAppのリンク機能を使った接続」を挙げており、これはMeta公式のWhatsApp Business APIではなく、QRコードでWhatsApp Webにログインする非公式な方式です。実際、低評価レビューでは接続が繰り返し切断する、アカウントが制限されるという報告が複数あり、開発元自身がレビュー返信で「非公式なQRコードでのペアリングがMetaのバックグラウンド更新で同期を失うことが原因」「公式のMeta WhatsApp Cloud APIへの切り替えを」と繰り返し案内しています。評価は3.9(330件)で、5本の中で最も低くなっています。同じ開発元は「WhatFlow WhatsApp Business API」という別リスティング(4.9、20件)で公式API接続版も提供しています。
Chaty Chat Buttons & WhatsApp

出典: Shopify App Store(Chaty Chat Buttons & WhatsApp)、2026年9月4日時点
他の4本とは性質が異なります。ChatyはWhatsApp Business APIを使わず、クリックするとWhatsApp(wa.me)や20以上の他チャネルのチャットが開くボタンをストアに設置するだけのアプリです。ブロードキャスト配信、カート復旧の自動化、テンプレート管理といったマーケティング機能はありません。無料プランは月間訪問者500人まで、Basic(15ドル/月)からGrowth(79ドル/月)まで訪問者数に応じた課金です。評価は4.9(292件)と高く、「とりあえず問い合わせ導線としてWhatsAppボタンを置きたいだけ」のストアには合いますが、この記事で扱う「WhatsAppマーケティング配信」の代替にはなりません。
まとめ
Shopify MessagingのネイティブWhatsApp機能は、2026年7月29日に追加された比較的新しい機能です。全プランで追加アプリなしに使え、料金体系もシンプルですが、送信対象からアメリカ合衆国が除外されているという制約は、米国向けストアにとって導入判断を左右する事実です。中国は事業体登録国としても利用できず、ブラジル・インドネシアは自国外への送信に追加の認証・実績要件があります。
米国の顧客にWhatsAppマーケティングを届けたいストアには、独自のWABAを使うサードパーティアプリが選択肢になります。公式WhatsApp Business APIを使っているかどうかは、アプリ選定で見落とされがちですが実務上は重要な軸です。WhatFlowの事例が示すとおり、非公式な接続方式は接続断やアカウント制限のリスクを伴います。カタログ内購入や複数エージェント対応まで求めるならZoko、代引き確認やBlue Tick申請を含めたいならInterakt、無料から段階的に始めたいならDondyのPower Automation以上、という整理になります。ChatyのようなAPI非対応の簡易チャットボタンは、マーケティング配信の代替にはならない点も導入前に確認してください。
本記事の数値は2026年9月4日時点でShopifyヘルプセンター、Shopify Changelog、Shopify App Storeの各掲載ページを確認したものです。料金・評価・レビュー件数・対象国は変動します。導入前に必ず最新の情報をご確認ください。
チャージバック通知が届いたとき、多くのストアは「何かアプリを入れないと戦えない」と考えます。しかしShopifyヘルプセンターは、Shopify Paymentsを使っていれば期限日に証拠を自動収集・自動提出すると明記しています。商品未着系の紛争にはAIによる分析まで自動で添付されます。一方で、勝訴しても「チャージバック率」自体は下がらず、Visa VAMPの「Excessive」しきい値は2026年4月に2.20%から1.50%へ引き下げられました。この記事では、Shopify Payments標準のチャージバック対応フローを一次情報で確認したうえで、実在する対応アプリ5本(Chargeflow、DisputeShield、ChargePay、Reclaim、Disputifier)を、料金の課金軸という観点で比較します。課金の分母は「回収額の%」「Shopifyプラン別の月額固定」「無料」の3種類にはっきり分かれています。調査日は2026年9月4日です。