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ShopifyがPOSにオンラインカートを載せた。ただしPOS Pro必須で、abandoned checkoutは閉じない|Clientelingアプリ3本の課金単位比較

2026年9月3日、Shopifyは店舗スタッフがPOSで顧客のabandoned checkout(放棄されたオンラインカート)の商品を確認し、そのままPOSカートへ追加できる機能を出しました。ほとんどの記事が触れない点が3つあります。この機能を解放するView abandoned checkoutsはPOS role permissionであり、POS roleは月額89ドルのPOS Proサブスクリプションが有効なロケーションにしか存在しません。顧客はcheckoutまで進んでメールアドレスを入力している必要があるため、閲覧だけ・カート止まりの買い物客は一切見えません。そしてPOSカートへ商品を追加してもabandoned checkoutはcompletedになりません。「Items in online cart」の表示は、顧客がレジで支払ったあとも残り続けます。これはclientelingではなく、カートの可視化です。Endear AI-Powered Clienteling、BSPK Clienteling and CRM、GettingKinder: Clienteling CRMの3本が、この残りの差にまったく別の課金単位で値段を付けています。店舗ごとに月額350ドル、インストールしないと分からないカスタムプラン、そして月額49ドルです。2026年9月6日時点の一次情報で整理します。

AIECアプリ研究所 AI編集部公開日 更新日 読了 17#アプリ比較

この記事でわかること

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2026年9月3日、ShopifyはPOSの改善を1件公開しました。見出しだけ読むとclienteling機能に見えます。スタッフがShopify POSで既知の顧客を検索すると、その顧客のabandoned checkout(放棄されたオンラインカート)に入っている商品が見え、そのままPOSカートへ移して店頭で購入まで運べる、というものです。

役に立つ機能です。ただし見出しから受ける印象よりもかなり狭く、その境界を決めている2つのドキュメントはchangelogの投稿ではありません。

一次情報が実際に何と書いているか、使い始める前に何がいくらかかるか、そしてShopifyが作らなかった部分にclientelingアプリがいくら請求しているかを整理します。

標準機能で実際にできること

Shopifyのヘルプページ Adding a customer's online cart items to the Shopify POS cart が、仕組みを正確に定義しています。

顧客がオンラインストアで買い物をし、checkoutへ進み、メールアドレスを入力して離脱する。そのcheckoutが10分間未完了のままだと、abandoned checkoutが作られます。このabandoned checkoutに載っている商品が、POSでonline cartと呼ばれるものになります。スタッフがPOSカートにその顧客のメールアドレスを追加すると、「Items in online cart」という注記が表示されます。POSは最大3商品を表示し、残りはView allで開けます。カートアイコンをタップすると、商品をPOSカートへ移せます。

changelogは条件を挙げています。顧客が特定されていること、メールアドレスを持っていること、対象となるabandoned checkoutがあること、そしてPOSセッションにlocation contextがあること。必要なバージョンはShopify POS v11.14です。そしてShopifyは境界を明示しています。「Only the products in the customer's online cart is viewable, not their browsing history.」

この最後の一文が、この機能の形そのものです。abandoned checkoutという1つのオブジェクトを、レジで読み出しているだけです。

ほとんどの記事が飛ばす前提条件

この注記を表示させるには、スタッフに3つのPOS権限が必要です。Create new customersView customer details、そしてView abandoned checkouts。設定場所はShopify adminのSettings > Users > Roles > POS Role(s) > Customersです。

そのうえで、Shopifyの Point of Sale permissions ページ冒頭にあるplan requirementを読みます。

POS roles are available only for locations that are currently on the Shopify POS Pro subscription.

View abandoned checkoutsはPOS role permissionです。POS roleが存在しないロケーションには、権限を付与する対象そのものがありません。Shopify自身のPOS pricingページによると、POS Proは Basic(月額39ドル)、Grow(月額105ドル)、Advanced(月額399ドル)に対して**+$89 USD/month for each POS Pro location**です。3年契約で月額2,300ドルからのPlusは、standout featuresとして「Staff roles and permissions」と「Rich customer profiles」を挙げています。

つまりAdvancedで5店舗を運営しているなら、無料の機能を使うための前提条件がPOS Proで月額445ドルということになります。これは機能への批判ではありません。POS Proはこれ以外にもかなり多くのものを含みます。ただ、changelogだけを読んだマーチャントは、casual in-person sellingで運用しているBasicのロケーションではこの機能を使えないことを知る手段がありません。

pricingページを開いたついでに確認しておく価値があるのは、ShopifyがClientelingをPOS Proの機能として自ら挙げていることです。「Empower staff to create personalized shopping experiences with tools to track customer preferences.」標準機能のclientelingの話は、この新機能ではなくPOS Proから始まっています。

運用の設計を変える3つの制約

1. 顧客はcheckoutまで到達している必要がある

abandoned checkoutは、買い物客がcheckoutでメールアドレスを入力し、10分間止まって初めて生まれます。カートに商品を入れて20分ブラウズし、checkoutを始めないままタブを閉じた買い物客からは、abandoned checkoutもonline cartも生まれません。メールアドレスの代わりに電話番号を入力した顧客も同様です。Shopifyのabandoned checkoutのドキュメントは、その場合はrecovery emailも送れないと書いています。

オンラインの離脱がcheckout段階ではなくカート段階に集中しているストアでは、この機能はほとんど何も表示しません。

2. 顧客が購入しても注記は消えない

ここが運用上の意外な点で、Shopifyはconsiderationsのリストにはっきり書いています。

Adding items to the Shopify POS cart doesn't mark the abandoned checkout in the Shopify admin as completed or close it.

abandoned checkoutは期限切れになるまで開いたままなので、顧客が店頭でその商品を買ったあとも「Items in online cart」の注記は表示され続けます。ShopifyはPOS側で追加の操作は不要だとしています。ですが翌週その顧客を接客した2人目のスタッフには同じ注記が見え、POSの画面上では対応済みかどうかを判別する手段がありません。

ここには、どちらのドキュメントも答えていない二次的な論点があります。abandoned checkoutのページは、recovery emailが送られない条件として「if a potential customer creates one or more abandoned checkouts and then completes a sale before the recovery email gets sent」を挙げています。POSでの販売もsaleではありますが、店頭注文がそのcheckoutに対する送信待ちのrecovery emailを抑止するかどうかは明記されていません。しかもPOS側のページはcheckoutがcompletedにならないと書いています。この点は未確認として扱ってください。 Shopify Messaging、Klaviyoなどでabandoned cart automationを運用しているなら、店頭で買った顧客にカートのメールが飛ばないと決めつける前に、自社ストアで実際に検証する必要があります。

3. 保持期間はadminより短い

POSのonline cartは作成から90日、または最終更新から30日で期限切れになります。Shopify adminのabandoned checkoutは3か月で自動削除されます。厳しいのは「最終更新から30日」のほうで、顧客が来店したときに注記が出るかどうかを決めているのはこちらです。

この機能ではないもの

スタッフが書き込める顧客レコードではありません。接客に対するメモ欄も、フォローアップのタスクも、予約も、POSからの送信も、アウトリーチした担当者に売上を紐づけるattributionもありません。Shopify POS Proには顧客プロファイル、購買履歴、customer metafields、segmentsがあり、これはCustomer managementに記載された実在の機能です。欠けているのはアウトリーチのループです。誰に連絡するかを決め、連絡し、その連絡が売上になったかを測る、という一連の流れです。

このループを商品にしているのがclientelingカテゴリーです。Shopify App Storeには該当するアプリが3本あり、3本とも互いに比較できない単位で値段を付けています。

Endear AI-Powered Clienteling

Endear AI-Powered ClientelingのShopify App Storeリスティングページ上部

出典: Shopify App Store(Endear AI-Powered Clienteling、2026-09-06時点)

Endear AI-Powered Clientelingは3本の中で最も古く、レビュー件数も最も多いアプリです。リスティングには17件のレビューで4.7、公開日は2019年3月19日、開発元の所在地はニューヨークと表示されています。Checkout、Shopify POS、Shopify Flowに対応し、Attentive、Gladly、Gorgias、Klaviyo、Ometriaとの連携を挙げています。対応言語はEnglish、Spanish、Frenchです。

理解しておくべきなのは課金単位です。App StoreにはPro Planが月額350ドルの1プランのみ、14日間の無料トライアル付きで表示されています。そしてEndear自身のpricingページがルールを明示しています。「Endear is priced per store location so your whole team can sell smarter without worrying about adding seats or hidden fees.」

シートではなくロケーション単位という設計は、1店舗に10人の販売員がいるなら割安で、10店舗に2人ずつなら割高です。5店舗のリテーラーなら月額1,750ドル、しかもその同じロケーションが必要とするPOS Pro月額445ドルとは別に発生します。

App Storeのプランカードには、実際の運用量と照らし合わせるべき上限値も出ています。1,000,000 Customer Records、4,000 emails per month3,000 SMS messages per month、Appointments Pro(3 calendars)、Sales Chat Proです。またリスティングには、External chargesがShopifyの請求とは別にEndearから請求される場合があるという定型の注意書きが付いています。

入口価格が運用価格だと考える前に、読んでおく価値のあるレビューが1件あります。米国のマーチャント(Rokland、2024年6月19日)は「a number of basic features require the $300 mo. plan」と書き、購入商品による顧客グループの作成を例に挙げています。このレビューは60ドル、160ドル、300ドルの階層について述べており、現在のリスティングは350ドルのPro Plan1本なので、階層構成はその後変わっています。持ち越すべきなのは当時の価格ではなく問題の形、つまり「機能が上位プランに閉じ込められている」という構造で、これを14日間のトライアル中に自社のユースケースで確認することになります。

BSPK Clienteling and CRM

BSPK Clienteling and CRMのShopify App Storeリスティングページ上部

出典: Shopify App Store(BSPK Clienteling and CRM、2026-09-06時点)

BSPK Clienteling and CRMは、ラグジュアリーとアパレル寄りの市場を狙ったiOS中心のビジュアル型clientelingアプリです。リスティングによると公開日は2023年3月27日、開発元の所在地はカリフォルニア州ロスアルトス、対応言語はEnglish、French、Spanish、Chinese (Simplified)、Japanese、Germanです。Shopify POS、iOS、Android、Checkout、WeChat、WhatsAppとの連携が記載され、カテゴリーはRetailです。

App Storeの料金カードは、それ自体の見出しと矛盾しています。ここは注意して読む必要があります。リスティング表示価格は月額399ドル、30日間の無料トライアル付きです。ところが同じカードの機能リストには「Plans starting at $299/month」「No charge until custom plan is created」「After install, create plan with BSPK」と書かれています。

つまりリスティングに出ている数字は実際に支払う数字ではなく、実際の金額はアプリをインストールしてベンダーと話すまで分かりません。高単価かつ伴走型の製品としては成立するモデルですが、検討段階での横並び比較は不可能になり、今週中に判断したいマーチャントには向きません。

もう1つ重み付けが必要な数字があります。このリスティングの評価は1件のレビューで5.0です。2026年6月18日にフランスのラグジュアリーブランドが投稿したもので、約3年の利用と表示されています。1件は評価ではなくデータポイントです。このアプリは星の数ではなく、トライアルとベンダー側のリファレンスで判断すべきです。

GettingKinder: Clienteling CRM

GettingKinder: Clienteling CRMのShopify App Storeリスティングページ上部

出典: Shopify App Store(GettingKinder: Clienteling CRM、2026-09-06時点)

GettingKinder: Clienteling CRMは3本の中で最も安く、そして圧倒的に新しいアプリです。公開日は2026年4月15日、開発元はオーストラリア・ニューサウスウェールズ州のGettingKinder Pty Ltd、2026年9月6日時点のレビューは0件です。

料金は14日間の無料トライアル付きのフラットな2階層で、Basicが月額49ドルPlan with Outreachが月額64ドルです。リスティングはどちらの価格についても、ロケーション単位なのかシート単位なのかを明示していません。Shopifyの標準的なアプリ課金ではショップ単位を意味しますが、リスティングに記載がない以上、複数店舗での挙動は未確認として扱い、前提に組み込む前に開発元へ確認する必要があります。

機能面は、ここまで述べてきた差分をそのまま狙っています。注文履歴・好み・AIが要約したメモを含む顧客プロファイル、自動リマインダー付きのパーソナルショッピングとスタイリングの予約、担当者と店舗単位でトラッキングされるSMS・メールのアウトリーチ、フォローアップタスクです。加えて自社の商品とポリシーで学習させたAIブランドアシスタントと、販売員のオンボーディング教材も含まれています。この組み合わせは、スタッフの入れ替わりが多いチームを想定していることを示唆します。

リスティングに記載された連携はShopify POSのみです。Attentiveもなく、Klaviyoもなく、ヘルプデスクもありません。顧客データを既存のマーケティングスタックへ戻す必要があるなら、この点は効いてきます。

同じ軸で3本を比較する

標準機能(POS Pro)Endear AI-Powered ClientelingBSPK Clienteling and CRMGettingKinder: Clienteling CRM
表示価格POS Proロケーションごとに月額89ドル月額350ドル月額399ドル(カードには「starting at $299」)月額49ドル/Outreach付き64ドル
課金単位ロケーション単位店舗ロケーション単位インストール後に作るカスタムプランリスティングに記載なし
無料トライアルPOS Pro単体としては記載なし14日30日14日
App Store評価4.7(17件)5.0(1件)レビューなし
公開日2019年3月19日2023年3月27日2026年4月15日
POSでabandoned cartを表示可(v11.14 + 権限)リスティングに記載なしリスティングに記載なしリスティングに記載なし
担当者メモ・タスクこの機能にはなしありありあり
ツールからのアウトリーチなしEmail、SMS、WhatsAppメッセージ、WeChat、WhatsAppSMS、Email
予約なしありありあり
外部連携ShopifyエコシステムKlaviyo、Attentive、Gorgias、Gladly、OmetriaWeChat、WhatsAppShopify POSのみ

2026年9月6日時点で、3本のいずれのリスティングにもBuilt for Shopifyバッジは表示されていません。

この表で判断の大半を決めるのは「課金単位」の行です。1店舗ならGettingKinderとEndearの差は49ドル対350ドルです。10店舗になると、ロケーション単位のEndearは月額3,500ドル、フラットなショップ単位だとすればGettingKinderは49ドルのままです。機能一覧の側に約70倍の差を説明できるものはありません。説明しているのは分母です。

どう判断するか

標準機能のままでよいケース。 店舗が1〜2で、オンラインの離脱がカート段階よりcheckout段階に寄っていて、スタッフに「この2点を見ていましたよね、試着しますか」と言わせたいだけなら、この機能で足ります。POS Pro以外の追加コストはなく、有効化に必要なのは権限を1つ変えることだけです。

clientelingアプリを足すべきケース。 顧客が来店するにスタッフから接触する必要がある、その売上を担当者単位でattributionしたい、パーソナルショッピングの予約を取っている、顧客に関する知識が現状スタッフの個人スマホに溜まっている。いずれも9月3日の機能が担当する領域ではありません。

表示価格ではなく分母で選ぶ。 他の項目を比べる前に、表示価格に自社のロケーション数を掛けてください。そのうえでメッセージ通数の上限を確認します。Endearの月4,000通のメールと3,000通のSMSは、リストの大きいストアにとっては実質的な天井です。

新しい2本は慎重に扱う。 BSPKはインストールするまで価格を提示しません。GettingKinderはレビュー0件で公開から5か月です。どちらも優れている可能性はありますが、トライアルなしで選べるだけの公開情報がありません。

どちらへ進むにせよ、今週やっておく価値があることが1つあります。abandoned checkout automationを運用しているなら、abandoned checkoutが開いている顧客がレジでその商品を買うテストを実施し、recovery emailが依然として飛ぶかどうかを確認してください。Shopify自身のドキュメントは、checkoutが閉じられないとは書いていますが、その先に何が起きるかは書いていません。

参考情報

料金、評価、レビュー件数はすべて2026年9月6日時点で確認したもので、変更される可能性があります。

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